第1章:経営・ビジネス・働き方のやらない決断(1)

(1)退職希望者は引き止めない

経営者としての経験から、僕は一度「辞める」と口に出した社員を引き止めることはしないと決めています。なぜなら、「退職」という言葉が一度出た時点で、その社員はすでに心の中で違う方向ベクトルに進み始めていることが多く、たとえどんなにあなたが必要だと引き留め働き続けてもらったとしても、いずれ必ず会社や他の社員に面倒な問題を持ち込む可能性が高いです。例えば連れションのように一緒に転職を勧誘したり、会社の利益を転職先に移してしまったり。だからこそ、彼らを引き止めることはしないと明確に決めています。

代わりに僕が意識しているのは、責任を明確にし、それを適切に与えることです。責任を持って任務を遂行することが求められる中で、逃げる人はそれ以上追うべきではありません。責任を全うしようとしない人材に対して、経営者として時間や労力を割くことは、結果的に他のメンバーや組織全体に悪影響を及ぼす可能性が高いのです。組織にとって必要なのは、与えられた役割と責任を担い、組織の一員として前向きに貢献しようとする人材です。逆に、責任を与えられた時点で逃げ腰になってしまう人には、特別な配慮や追いかける姿勢を見せる必要はないのです。

このため、僕が重視しているのは、新入社員の早い段階で、その人が責任を持って行動できるかどうかを判断することです。入社から1日でも早く、彼らが責任を果たす意識を持っているかどうかを確認することは、経営者にとって非常に重要です。この判断が早期にできることで、組織全体の健全性を保ちながら、強いチームを築くための土台が整います。