電子書籍用に下書きとして連載形式で順次公開して行きます。

著者:吉田英樹

プロローグ: 運命の狭間

東京の片隅、狭く薄暗いアパートの一室。ここに住むのは、30歳の独身会社員、田中秀樹。彼の人生は、夢を失い、日々の単調さに埋もれていた。仕事は退屈、人間関係は希薄、そして唯一の逃避先はパチンコや競馬といったギャンブル。生活はその日暮らし、希望は見えず、彼は自分を「最低の男」と呼ぶことさえあった。

「また、今日もダメだった...」

秀樹はパチンコ店の前でため息をつく。またしても負けた。手元には空っぽの財布と、失望と後悔だけが残る。

ある晩、ふとした瞬間の運命が彼を変える。仕事帰り、不注意から交通事故に巻き込まれる。意識が朦朧とする中、彼は奇妙な夢を見た。

夢の中、秀樹は自分が無限に広がる空間に立っていることに気づく。そこには数えきれないほどの箱が並んでおり、それぞれには「くじ」と書かれていた。

「これは一体...」

突然、空間が揺れ動き、声が響く。

「これは人生のくじ。人間は毎日無意識にこれを引いて、その日の運命を決めるのだ。」

驚愕する秀樹。彼のこれまでの人生が、運命のくじ引きによって動いていたのだ。

「だが、お前は特別だ。事故の影響で、お前はこのくじを意識的に引けるようになった。そして、人生の可能性を見ることができる。」

目覚めた秀樹は、夢と現実の境界で立ち尽くす。彼に与えられた新しい力。これは彼の人生に何をもたらすのか? それとも、ただの幻想に過ぎないのか?

事故から目覚めた秀樹は、新たな気持ちで人生と向き合う決意を固める。これまでの彼とは異なる道を歩み始めたのだった。