第1回 ポジショニングと目標設定
開催日2021年9月14日(火)14:00~
塾生紹介
ケーナ奏者 Renさん
南米アンデスの縦笛ケーナを演奏している演奏家。ケーナの演奏のほか教室、ケーナの制作活動、楽曲の制作など。今年1月に音楽事務所を立ち上げ、今は一人で運営。元中学校の数学教師。受講のきっかけは、吉田さんのラジオに出演したこと。
動物プロデューサー 香川彰範さん
ファーストスタープロダクション代表。動物プロデューサー。移動動物園の企画・運営、セラピードックの派遣、メディア系(テレビ・ドラマ・CM等)への派遣、番組の監修など。独立して再スタートをきるにあたり、HPのコンサルを吉田さんに依頼したことから参加。
1、ワークショップ…ポジショニングマップを作る
商売をする際のプランニングで重要なのは、さまざまなチェックから始めること。そのために必要なのが「ポジショニングマップ」の作成。これが自分が戦う“フィールド”を決めるための重要な指標となる。このマップを作成するにあたり、まず考えなければいけないのが「3C分析」
自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの「C」について分析することで、自社の強みや弱みは何か、お客さんはどんな状況で買ってくれるのか、どんな競合がいるのか、といった現状を客観的に把握することができる。1回目の講義ではこの3C分析のフレームワークをおこない、ポジショニングマップを作成することで課題を探り、戦略を決定し、半年後の目標を設定する。
3C分析
1)自社の分析
自分の今の状態を客観的に把握する。強みや弱み、現状での市場での立ち位置などを分析。販売する地域なども視野に入れる。謙遜は捨てること。自慢するくらいでOK。それがプロモーションにつながる。
2)顧客の分析
その商品を買うユーザーがどんな人かを仮で設定する(ペルソナ設定)。「若い女性」など大まかな設定ではブレてしまうので、できるだけ具体的にイメージをすること。ただし、例えばランドセルのように、使う人と買う人が違う場合もある。ターゲットは子供でもプロモーションするのは親や祖父母世代ということになる。この場合の顧客は「50〜60代の孫のいるおじいちゃん・おばあちゃん」ということになる。プレゼントの場合は、お金を出す人が使う本人ではないので、アピールするターゲットが変わってくる点に注意。
3)競合の分析
自分が売っていく商品がすでに他社がやってるなら、なるべく大手と被らないところを見つけていく。そのためには、競合のチェックもしながらプロモーション進めていく必要がある。逆を言えば、すでに認知はされているということなので、コバンザメ的に大手に便乗することも戦略の一つ。競合となり得る同業他社をピックアップしておくことは、半年後に結果を出すための行動を起こする際に必要となるので、相手を知ることも大切
ポジショニングマップ
縦軸と横軸で考察。例えば「価格」を縦軸、「品質」を横軸とした場合、右上が高価格で高品質の市場ということ。ユーザーにとっては品質が高くて価格が安いこと理想だが、競合他社が多い市場でもあるため、自分たちは現状どの立ち位置にいて、強みを生かしてどのシェアを狙うのか、その範囲(丸の大きさ)はどのくらいかを探る。一番狙いたいのは競合がいないところなので、他社のいない“隙間”を探したいが、空いているというのは“売りにくい”という部分でもある。
ポジショニングマップはいろんな軸で自由に作れるので何枚も作ってみる。その際、軸は自分で決めてしまうとズレていく可能性があり、正しいかどうかの判断ができないので、できればみんなの意見を取り入れユーザー目線で客観的につくることが重要。ただ、価格と品質は王道。これは必ず考えたうえで、自分たちのシェアはどの辺かを探る。また、どれもこれもとなると結果がブレるので、今回は自社が扱っている商品のどれか一つに絞っていきたい。
価格の設定としては、大手でない限り、低めに設定してしまうと自分の首を締めることになる。安くても自動的に売れていくような商品なら良いが、「倍(数)売ればいい」というのは忙しくなるだけ。ただ高いだけでなく、いかに付加価値をつけて高く売るかがポイント。
(例)カフェ、ビール、洋服ブランドなど
価格やメニューのバラエティさを軸に、カフェなら大手のスターバックスやコメダコーヒーなどをパップ状に配置。価格以外にも、カフェならではの「空間(居心地)」なども軸になり得る。
そもそも、競合がなかったらマップを作る必要はない。ただ、どこにも競合がないという新しい業界だった場合は、どこでも勝負できる“ブルオーシャン”だが、その商品がブランド化していない(認知度がない)ということにもなるので、プロモーションが非常に難しい。まずはブランド作りが主な目標となり、販売地域や需要、規模なども分析していくことが重要。
分析発表
Renさん
強みは、ケーナ奏者がプロでやってる人が全国で10人いないこと。自分で楽器を作って販売している演奏家も一人もいない。人が少ないので、自由がきくことが強み。ただ、作るのが難しく時間もかかるので一人では手が回らないため、一般販売はできていない。生きている竹を見て良い楽器になるか判断する職人的な目も必要なので、制作の技術を持った人とうまく分担できるようなのが理想。弱みは、ケーナが知られていないこと。
自分の立ち位置としては、去年までのコンサート動員数でいえば、ケーナ奏者としては一番だと思うが、演奏家としてはまだまだ認知度がない。コンサートの音響もできるし、オンライン配信のコンサートもシステムもできるし、ケーナも作れるし、教室もあるので、全般的にできるかもしれないとは思っている。
ケーナ販売については、低価格のものがベースになっている現状を壊していきたい。そして、演奏家が住みやすい世界を作りたい。
これについて吉田さんからは、「目標をケーナの認知度を上げることとする場合、数値的根拠が必要になる」とアドバイス。例えばインターネットでどれくらい検索されているのかなどの現状分析をし、1日で仮に1000件だった場合、半年後に1万件になっていれば市場も10倍ということ。そのためのプロモーションをどうやって行くのか。ユーチューブなのかSNSなのか、テレビ出演なのかなどが今後の課題とのこと。
香川さん
自社の強みは、特殊な業界で、特殊な知識を持っていること。動物に関する知識が豊富ということ。また大手があまり参入していない世界で、小規模な事業者が全国にいるので、地方のイベントなど今までやっていなかった施設に提供するなどが可能。
弱みは、動物かわいそうというマイナスイメージを持たれがちであるころ。資格や行政への登録してきちんと動物のケアしながらやってるが、見た目でリラックスしていても「ぐったりしていてかわいそう」とクレームが入ることも。ときには虐待と言われてしまうこともある。
今の市場エリアは、南東北と関東圏(おもに北関東)に絞っている。
目標設定発表
Renさん…「ケーナの認知度を上げる」
受講して、ケーナで新しいことがたくさんできると実感。私の生活にはケーナしかない。いろいろと事業展開を考えたら、この素晴らしい音色の楽器をとにかくたくさんの人に知ってもらいたいというところに行きつきました。なので、まずはケーナに認知度を上げていくことを軸に、いろんなことに挑戦していきたいと思います。
香川さん…「件数150%・売上200%・新規開発5社」
いろんな事業があるなかで、移動動物園に絞って設定。今回は、見栄え・清潔感・安全度・価格・ボリュームなどさまざまな角度から分析することができた。本音ではまったくできる気はしないんですが、自分に十字架をかけます。
塾生感想
Renさん
これまで、コンサートや教室をもう少し充実するという今までの流れに沿っては考えていただけで、経営の道筋や具体的な数値、利益などについては考えていなかったので、分析などを改めて書きだしてみて、視覚的に見ると空いている隙間というのが見えた。図にしたことはなかったので、どことどこが繋がってるとか、客観的に把握することは大事なことだなと。
自分は思いついた時に動くタイプなので、半年という計画を立てて行動するというのは人生初。今後は演奏以外にも考えることが多くなると思うが、正直、不安しかないです。
知らない知識やノウハウを持ってるみなさんの話を聞いてるだけでできた気になってしまう。正直、どのくらいがゴールなのかが分からないし、そもそもゴールはないと思いますが、可能性しかない市場だということを言っていただけたし、「知られていない楽器で悲しいな」というところから、「知られていないんだからこれからいっぱい知ってもらえる」という気持ちに切り替えられた。まずは僕自身が何をどうすべきかまったくわかっていないので、その辺も含めてすべて勉強させていただき、必死に考えていきたい。
香川さん
昔、会社員だった頃は今回のように分析して商談したりということをやっていたので、懐かしい気持ちもあって楽しかった。今後の経営について考えたり書き出したりしたことはいっぱいあったし、改めてこういうことだよなと再確認できた。これまではジャンルに分けて分析するところまではしてなかったが、頭の中にはあったので、比較的スムーズに書くことはできた。最後のミッション決めはやっていなかったので、時間と内容を限ってミッションを決めることができたのは大きい。