【序章】なぜ今社長がブランドにならなければいけないのか 1:社長が「出ない」と会社は伸びない時代

1:社長が「出ない」と会社は伸びない時代

かつて僕は、「社長は黒子に徹するべきだ」と思っていました。現場の邪魔をせず、社員が主役となって輝くのが理想の組織。だから自分は一歩引いて、全体を支える存在でいればいい。そう信じていたんです。

実際に、ある広告企画のプロジェクトでは、僕は一切前に出ず、社員にすべてを任せました。クライアントとのやりとり、企画の立案、プレゼンまで、担当者が主導で進めるスタイルをとりました。「社長がしゃしゃり出るよりも、社員が前に立った方が、会社の印象も良くなる」と考えていたからです。

でもそれは、大きな間違いでした。

プロジェクトが成功したとたん、その担当社員は「これは自分の手柄」と語るようになりました。クライアントに対しても、まるで個人の実績であるかのように振る舞い始めたんです。

さらに問題だったのは、その過程で守秘義務のある案件の存在をほのめかしたり、「競合企業の仕事もやっている」といった、まったくの事実無根の噂を流されたり・・・長年「義理と人情」「仁義」をなによりも大事にしていた僕の信用が、崩れ落ちた瞬間でした。当然ながら、クライアントの信頼も揺らぎました。結果的にその社員はチームごと会社を離れ、僕を仕事が出来ない無能な「悪役」に仕立て去っていきました。

この時、僕は痛烈に思いました。
「社長が出なかったことで、すべてを壊してしまった」と。

でも同時に、思い出したんです。僕自身もかつて、勤めていた会社で役員を任されていた頃、同じようなことをしていた。社長の顔や想いが見えない中、自分の価値観で勝手に判断し、結果的に組織とズレていった。そう考えると、あの社員が悪かったのではない。

社長である僕が出るべき場面で出なかったことが、すべての根本原因だったんです。

そこから、僕は考えを180度変えました。たとえ「ワンマン社長」と思われようが、自分の想いや考えは、社長自身の口で語る。矢面に立ち、必要なときにはクライアントとも直接向き合う。そのうえで、組織として、チームとして進む体制を整えていこうと決めたのです。

もちろん今でも、「社長と直接話がしたい」という声はあります。細かな要望やニュアンスを「社長にしか伝えられない」というクライアントもいます。でも、僕一人でできる仕事には限界があります。

だから今では、社長の言葉を共有し、スタッフ全員で「伝える努力」を惜しまないようにしています。それでも改善されない場合には、丁重にお断りすることもあります。

お客様との関係は、対等で誠実な理解のうえに築かれるべきものだと考えているからです。

結果的に、社内の空気は大きく改善しました。スタッフ同士の信頼関係も深まり、クライアントとの関係性も健全なものに変わっていきました。

「社長が出ることで、会社が整い始めた」

これは僕自身のリアルな実感です。