【08】人は財産である

「人は財産」という言葉ほど空虚になりやすい言葉はない

「人は財産である」 
経営の世界では、これほど美しく、これほど繰り返し使われている言葉はありません。
経営理念にも書かれ、会社案内にも書かれ、講演でも必ず誰かが口にします。
ただ、この言葉はきれいごとに最もなりやすい言葉でもあります。

なぜなら、多くの会社で「財産」と言いながら、
実態は「消耗品」として扱われているからです。

・辞めたら悪者扱い
・意見を言ったら生意気
・成果を出しても待遇は変わらない
・困っていても声をかけない
・あいつはダメだで片づける

これで「人は財産」どころか、在庫管理のような扱いです。

僕自身、会社を始めたばかりの頃「人は財産だ」と言いながら、実際には「自分の思いどおりに動いてくれる人」が欲しかっただけでした。

都合よく動かなければイライラする。
辞めれば裏切りだと決めつける。
成果が出なければ「なぜやれないんだ」と責める。

つまり、口では財産と言いながら、
本心では消費する前提で人を見ていたのです。

この矛盾に気づかない限り、
「人は財産」という言葉はただの飾りになります。

財産とは「価値が増えていくもの」である

財産とは、本来どういう存在でしょうか。

それは、大切に扱い、育て、増やしていくものです。 もし「人は財産」が本気で成り立つ会社であれば、以下のような環境が自然と整っていきます。

・成長できる環境がある
・意見を言える空気がある
・失敗してもやり直せる文化がある
・成果に応じて待遇を変えられる
・辞めていく人とも関係が切れない

僕は経営の中で、ある瞬間を境にこの感覚が変わりました。 それは社員が辞めたときの受け止め方です。

昔の僕はこう思っていました。
「せっかく育てたのに」「裏切られた」「恩知らずだ」と、、、

でも、ある時ふと気づいたんです。辞めたという事実は、僕の経営の結果でしかない。「裏切り」だと思っていたのは、自分が勝手に期待し、勝手に依存し、勝手に傷ついただけでした。

会社が変わらなければ、人は離れる。
会社が成長すれば、人も育つ。
人が育てば、会社も強くなる。

つまり、
人は財産ではなく人が育つ会社こそが財産だと理解したのです。
財産とは単にそこにいる人では無く価値が増えていく関係性です。

財産は所有物ではなく預かりもの

多くの経営者が誤解しているポイントがあります。それは「人は財産=大切に囲い込むこと」ではないということです。財産とは、持っていることではなく、価値を生み続ける状態のことです。社員が辞めたとしても、会社に対する信頼や経験が残るならそれも財産です。逆に、いくら社員が辞めずに残っていても、挑戦がなく、成長もなく、ただ惰性で働き続けているだけなら、それは財産とは呼べません。

僕は今、こう考えています。

人は財産ではあるが、所有物ではない。
だからこそ、扱い方によって価値が増えるしゼロにもなる。

経営者は自分に問う必要があります。
「いま会社にいる人は本当に財産として扱えているか?」
「その人が辞めても財産だと言える関係を築けているか?」
「財産を増やす努力をし続けているか?」