くじ引き人生 - 第01話

本当に死にかけた BAD100 の人生くじ

その夜、僕は眠る前に、スマホに通知が来ていたのを思い出した。

あの奇妙なアプリ【KUJI:Life Picker】。
正直、まだ信じていなかった。

昨日、適当にインストールして、適当にプロフィールを見て。
そして、出てきた「くじの選択画面」。

「死にかけるほどの不運、ねえ」

画面を見ながら、苦笑した。
こういう都市伝説風のアプリは、作り手が適当に遊んでるだけだろう。
むしろ、この世界観おもろすぎ「BAD 100」ってどんな不運?

だから、僕は迷わずE:BAD 100を選んだ。

「良いくじ引きを、じゃねーよ……」

スマホを枕元に放り投げ、そのまま眠りについた。

翌朝。
ぼんやりと目を覚ました僕は、何も変わらない日常のつもりで支度をし、
いつものコンビニで缶コーヒーを買い、駅までの道を歩いていた。

眠気もあって、信号が変わったのを確認しながら横断歩道に足を踏み入れた。

その瞬間だった。

金属の塊が、猛スピードで僕に迫ってきた。
視界の左端から、黒いセダンが信号を無視して突っ込んできた。

逃げる暇なんてなかった。
轟音とともに身体が宙に浮き、次の瞬間、背中からアスファルトに叩きつけられた。

頭が揺れる。世界がぐにゃりと曲がる。

そして・・・真っ暗になった。


僕は、どこでもない場所に浮かんでいた。音も光もない。

ただ、脳裏に響いていた。

「BAD 100」

そうだ。昨日、選んだんだ。

面白半分で、ふざけた気持ちで。

「死にかけるほどの地獄」
それが、現実に起きていた。

あれは、アプリのただの演出じゃなかった。

嘘じゃなかった。全部、本当だった。(ふざけるなよ)

でも、もう何も感じなかった。

「・・・九条さん? 聞こえますか?」

微かな声。まぶたの裏に光が差し込む。

「目を開けてください・・・意識が戻りましたよ!」

ゆっくりとまぶたを開けると、見慣れない天井があった。
ぼやけた視界。酸素の管。ベッド柵の冷たい金属の感触。

「っ・・・ここは・・」

声が出た瞬間、涙があふれていた。

看護師が言った。「10日ぶりの意識回復です。ご家族、すぐ呼びますね」

10日?

僕は、すぐにスマホに手を伸ばした。指が震える。
ロックを解除し、KUJIアプリを開くと、履歴が自動で立ち上がった。

「……っ!」

10日間、何も選べなかった。
その間、自動でくじが引かれていた

そして、今日。

奇跡のように意識を取り戻したのはたまたまLUCK 100のくじを引けたからだった。

画面には、現在のステータスが表示されていた。

「……本物、だったんだな」

深く息を吐いた。

ゲームでもアトラクションでもない。
これは、僕の人生だ。

そして、僕にはあと355回の選択しか残されていない。