第四章:貢献の時代 ― 誰かのために生きる喜び【2】自分の利益と他者のための狭間で揺れる壁
【2】自分の利益と他者のための狭間で揺れる壁
利己と利他のはざまで揺れる心
貢献の時代に入ったからといって、「自分のために生きる心」が完全になくなるわけではありません。むしろ人は常に「自分の利益」と「他者のため」の間で揺れ動くものです。仕事では「顧客のために」と思いながらも、利益を優先しなければ会社は潰れてしまう。
家庭では「家族のために」と働きながらも、自分の夢を諦めきれずに心がざわつく。こうした利己と利他のせめぎ合いは、誰もが経験することでしょう。貢献の時代とは、この揺れを無視するのではなく、むしろ受け止めて「どう選ぶか」を試されるステージなのです。
「どちらか」ではなく「どう両立するか」
多くの人が陥りがちなのは、「自分のために生きること」と「人のために生きること」を対立構造で捉えてしまうことです。どちらかを選ばなければならない、と思い込むのです。
しかし、実際には両立の道があります。たとえば、顧客に誠実に尽くせば、その信頼がやがて利益として返ってくる。家族を大切にすれば、その安心感が自分の挑戦を支えてくれる。つまり「他者のため」は、遠回りに見えても最終的には「自分のため」にもつながるのです。大切なのは「短期的な利益」ではなく「長期的な信頼」に軸を置けるかどうか。利己と利他を同時に満たす道を探ることが、貢献の時代を生き抜く鍵となります。
揺れを受け入れたときに見える景色
自分の利益と他者のため。そのはざまで揺れると、人は葛藤し、苦しみます。「どちらを選んでも誰かを裏切るのではないか」と思うこともあるでしょう。けれど、この揺れを感じること自体が「貢献のステージに立っている証拠」なのです。
依存の時代には、そもそもそんな葛藤はありませんでした。他人に決めてもらうからです。自立の時代には、自分の責任だけを考えればよかった。しかし、貢献の時代は違います。他者の存在を無視できない。だからこそ迷い、悩むのです。
そして、この揺れを無理に消そうとする必要はありません。むしろ「揺れながら選び続ける」ことこそが、貢献を実践する生き方なのです。今日の選択が誰かを少し笑顔にしたなら、それは立派な貢献です。揺れを抱えながらも一歩を踏み出す。その繰り返しが、やがて「自分のため」と「人のため」を重ね合わせる道をつくっていきます。


