くじ引き人生 - 第04話
偶然の再会
「……死ななきゃ安い」
あの日、BAD 100を引いて、自動車に撥ねられ、意識不明の重体になった。
そして、10日ぶりに意識を取り戻したとき、スマホには【LUCK 100】のくじ結果が表示されていた。
運命の帳尻合わせ。
それを痛いほど思い知った。
目覚めてからは、運の帳尻を自分で選ぶ日々が始まった。
最悪を先に引いておけば、最後に希望が残る
それがこの「人生くじアプリ」のルール!
僕は3日目から数日間、ひたすらBADの高数値を選び続けた。
誰よりも効率よく、誰よりも計画的に、自分の不運を前借りするように。
そして昨日僕ははじめてLUCK 55を選んだ。
他人の不幸に、自分の選択が影響していることを知ってしまったから。
「これは、ゲームじゃない」
それに気づいた日から
僕の中で、何かが変わり始めていた。
今日は雨が降っていた。
ずぶ濡れの公園のベンチに、ひとりで座る女性を見かけた。
ふと胸がざわついて、僕は彼女のもとに歩いて行った。
「……濡れてるよ」
傘を差し出したとき、その女性が顔を上げる。
「えっ……陽介?」
さやか??
学生時代の同級生。
そして、少しだけ付き合って、何となく終わった人。
僕の中で、遠い過去の名前だった。
「こんな偶然、ある?」
「相変わらずだな、そういうとこ」
ぎこちない笑いのあと、コンビニで傘をもう一本買って、彼女と少しだけ話をした。
「また、連絡してもいい?」
「うん。連絡先……変わってない?」
「変わってない」
それが、再会のはじまりだった。
──それから数日が過ぎた。
LINEで連絡を取り、何度か会った。
最初は、たわいもない話だけだったけれど、いつしか時間を忘れて話し込むようになった。
「……楽しいって、こういうことだったっけ?」
彼女と過ごす時間は、まるで止まっていた自分の時計が動き出すような感覚だった。
けれど、僕はその間も「くじ」を引き続けていた。
ただ、以前のようにBAD 80や90のような「強烈な不運」を選ぶことはしなくなった。
■10日目:BAD 19 → 小さなミスでコンビニのバイト先で怒られる
■11日目:BAD 22 → スマホの画面にヒビ
■12日目:BAD 15 → おつりの計算ミスで損をする
その程度のBADを、あえて選んでいた。
本当は、LUCKを引いて彼女と出かけたかった。
でも、それは贅沢な願いだと思っていた。
不運を引くのは、自分の役目。
だから、せめて彼女との時間だけは壊したくなかった。
夜11時55分。
くじ選択のタイムリミットが、迫ってくる。
スマホに表示されたくじは、こうだった。
A:BAD 41
B:BAD 9
C:LUCK 6
D:LUCK 88
E:BAD 20
「……LUCKを、使ってもいいのかな」
ふと、そんな考えがよぎる。
「さやかと会った日は、LUCK 55だった」
もしかして、あの奇跡みたいな再会は、
自分の幸運を誰かのために使った結果だったのかもしれない。
だったら、次もこの力を、彼女のために使ってみてもいいんじゃないか?
【選択完了】
D:LUCK 88
ゾロ目の末広がりな88
明日はさやかに良い事があればいいな・・・
残り:344枚
陽介の命:残りあと344日

