第1章:経営・ビジネス・働き方のやらない決断(2)

(2)社員教育はやらない

僕は、人材に投資する時代はすでに終わりを迎えたと感じています。かつては、社員が成長し、長く会社に貢献してくれることを期待して、時間も費用もかけて教育を行ってきました。しかし、現代では、3年かけてじっくり仕事を覚えてもらい、「さあ、これから力を発揮してもらおう」というタイミングで社員が急に天狗になり、他の職場に移ってしまうことが珍しくありません。特に中小企業にとって、組織の安定性を築くのは今の時代非常に難しく、少しの離脱が全体に大きな影響を与えることもあります。このような状況を背景に、僕は「社員教育」という従来の考え方は、もはや時代遅れではないかと考えるようになりました。

ただし、褒めて育てる前に、もっと大事なことがあります。それは「適材適所」を踏まえ、個々の能力を見極めることです。社員一人ひとりの得意や不得意を経営者がいち早くキャッチし、不向きな仕事をさせないことが、組織にとっても社員にとっても非常に重要です。とは言いつつも、昭和の僕にとって、これが一番苦労していることでもありますが(笑)。

今必要なのは、教育するのではなく体験させることです。叱ったり怒ったり、あるいはペナルティーやノルマを課して強制する方法は、むしろ逆効果になりがちです。現代の働き方において、こうしたやり方は社員のモチベーションを削ぎ、成長を妨げる要因になってしまいます。どれだけ正論であっても、押し付けの教育では意識のすれ違いが生まれ、結果として会社にとっても不利益を生むのです。

その代わりに僕が重視しているのは、「褒めて育てる」姿勢です。小さな成果でもしっかりと認め、褒め、社員が自己肯定感を持って次のステップへ進む意欲を育てることが大切です。こうして褒めながら少しずつ責任を増やし、「やらされる」ではなく「自ら進んで取り組む」姿勢を引き出していきます。

さらに、ランチェスター戦略を意識し、社員を将棋の駒に例えるような感覚で、「金」や「角」、「飛車」として成長させることが、教育に代わる経営者としての責務だと感じています。役割を少しずつ与え、責任を実感させることで、社員は組織の一員としての自覚を持ち、仕事への姿勢も変わっていきます。教育の時代が終わり、体験を通して適材適所で社員を成長させる時代が始まっているのです。